1月12日から民放テレビで始まった「アナログ」ロゴマークの常時表示(
前回の記事 >>)。このおかげで穏やかだった新春ムードが一気に吹き飛んでしまいました。テレビ好きの人間にとっては重大な問題です。この表示が、なぜ目障りなのか考えてみました。
▲大阪の民放各局の「アナログ」表示。関西テレビとテレビ大阪は黒い縁取りがついていて、より不快感が増す。白一色のものは背景が明るい時に消えて見えるが、縁取りがあるものは常に目立ったまま。他の文字と重なって読みづらくなる時もある。
放送機器の技術が発達したこともあり、近頃のテレビは大変多くの字幕が出るようになりました。そのため、視聴者も多くの字幕が出ることに結構慣らされてきたはずです。それなのに、なぜ「アナログ」表示は目障りなのでしょうか?
●番組に関係あるかないか?
番組中、ほぼ常時出ている表示と言えば、今何をやっているのかを記した表示が画面の隅によく出ています。しかし、これはほとんどの人が目障りとは思わないのでしょう。なぜなら、番組に関係のある表示であって、途中から見ても何をやっているのかが分かるという便利さもあります。
また、生放送の番組ではスポーツ(五輪中継など)でもバラエティでも「LIVE」という表示が常時出ることも多くなりました。これについては賛否両論あるかも知れませんが、生なのか録画なのか分かるうえ、生を見ているんだという臨場感が出て悪くは思いません(スポーツの時、文字に動きを付けるのは気になるのでやめてほしい。)。
これらは自分が気に入って見ている番組のスタッフが出している表示ですし、他の表示や人の顔にかぶった時は表示を消すなどの配慮もしてくれていますので、文句もありません。
●ニュース速報は?
ならば、「アナログ」表示は番組内容に関係ないから目障りなのでしょうか? しかし、番組内容に関係ないものならば、ニュース速報や気象情報、地震速報などがあります。しかし、これらは例え自分に必要なくても世のために必要な情報ですし、視聴の阻害になったとしても、数10秒辛抱すれば消えてくれます。
また、津波警報の時の点滅する日本地図や大きな災害が起きた時のL字画面などは、数10秒とはいきませんが国民の命に関わる重要性が高い情報ですので、視聴の阻害になったとしても、やむ得ないことです。他には、時刻表示もありますが、朝の出勤時などは役立ちますし、言葉ではなくメッセージ性がない数字ですので気になりにくいです。
●「アナログ」表示の有用性?
ならば、「アナログ」の表示に有用性はあるのでしょうか。ほとんどの視聴者はないと思っているでしょう。一部にこの「アナログ」表示を見て、デジタルを見ていたつもりが、実はそうでなかったということに気づいたという人は、きっとどこかにいるかも知れません。しかし、その人でさえ、その日からこの表示は必要ないものになってしまいます。
地デジのCMやPRは他でもたくさん行われており、今や地デジは日本人の常識になっていることと思います。そうであるのに、いちいち、しかも四六時中「アナログ」と知らせられるのは不愉快以外の何者でもないのです。「アナログ」表示で得られる効果よりも、はるかに視聴者が受ける迷惑度の方が大きい訳ですから、どう考えてもこのPR方法は間違っていると思います。
▲毎日放送は番宣時も「アナログ」表示が出る(左)。レターボックス放送時、通常の位置ならば「アナログ」表示は黒帯の中に入るのであるが、朝日放送は、レターボックス時、わざわざ位置を変えて映像のある部分に重なるようにしている(右)。そこまでして「アナログ」を目立たさなければならないのか。しつこさを感じる。
●なぜ、「アナログ」表示は目障りなのか?
なぜ、「アナログ」表示は目障りなのか。ここで結論を出しますと、番組内容に関係ないうえ、多くの人に有用性がないこと。また、どんな場面においても配慮なく一律に表示され邪魔であること。少々で消えるものではなく、2年半もの間、辛抱しなければならないこと。さらにはこの4文字に嫌みに思える強烈なメッセージが込められていること・・が目障りである理由となります。
1月25日の関西テレビ「
月刊カンテレ批評」で常時「アナログ」表示について、キャスターは「視聴者の皆様にアナログ放送で番組を見ていることを分かっていただき、地上デジタル放送に完全移行する2011年7月に向けてデジタル放送受信整備をお願いするためです。」と言いましたが、これを聞いてより一層腹立たしさが増しました。
余計なおせっかいであると感じますし、「お願いする」というスタンスでありながら、視聴者の迷惑となる方法で行うとは、どういうことなのかと思いました。「月刊カンテレ批評」は視聴者の批判に答える番組ですが、「アナログ」表示について苦情が出ていることは一切触れられませんでした。
●テレビマン失格
やはり、どう考えても映像が命であるはずのテレビ局がやることとは思えません。あまりにも多くの字幕表示を出し過ぎて、感覚が麻痺してしまったのでしょうか。よくこんなものが会議で通ったものだと思います。我が関西のサンテレビをはじめ、多くの独立U局は常時表示をやっていません。今やまともなテレビマンは独立U局にしかいなくなったのでしょうか。
アナログ表示越しに見るテレビは非常に味気ないです。文字が小さいNHKも含め、こんな表示は即刻やめていただきたいと思います。視聴者に迷惑をかけながら、だらだらと薄い表示を出し続けるより、クッキリした表示を番組冒頭にだけ出す方が余程潔いかと思います。
▼BPO、国民生活センターに通報するとともに、民放連や民放各局、Dpaへ苦情を送信しました。
(3月6日追記)
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ITmedia News:民放も「アナログ」マーク常時表示スタート
―――2月7日 追記―――
2月7日の毎日放送「MBSマンスリーリポート」で、「アナログ」表示について、「目障りとのご意見もいただきましたが、デジタルテレビに買い換えてもアンテナの接続やリモコンの操作などを間違えて気づかずにそのままアナログ放送をご覧になっているケースがあります。実際にご覧のチャンネルがアナログ放送なのかデジタル放送なのかがお分かりいただけるようにするためでもあります。」と説明していました。
「アナログ」表示の効果より迷惑の度合いの方が大きいですので、どんな理由を説明されようと納得はできませんが、隠さずに苦情が出ていることに触れたことは評価できます。
―――2月14日 追記―――
2月14日の読売テレビ「声〜あなたとよみうりテレビ〜」で、「アナログ」表示について苦情が出ていることが紹介されました。関西の自社検証番組で取り上げられたのは初めて。隠さずに取り上げたことは評価できます。しかし、回答は民放連からのもので、読売テレビとしての見解は示されませんでした。責任逃れ的な回答と言わざるを得ません。また、民放連の回答は表示目的の説明だけで視聴の邪魔になっていることについての見解はありませんでした。
(以下全文)「1月12日から始まったアナログ放送画面でのアナログマークの24時間表示に関して、『番組の冒頭だけで十分ではないでしょうか。画面を視聴する邪魔になって仕方ありません。』という苦情が10件ありました。この件について、日本民間放送連盟のデジタル推進部は、画面の右上に『アナログ』と表示することで今ご覧になっているテレビ放送がアナログ放送であることをもれなくご理解いただいています。アナログ放送の終了が2年半後に迫ってきたこと。そして、早めのデジタル放送受信の準備をお願いするために新年から始めました。と話しています。」
―――2月24日 追記―――
名古屋テレビの自社検証番組「メ〜テレオンブズ」(2月1日放送)にて、「アナログ」ロゴマークの24時間表示についての苦情が取り上げられたようです(詳細は番組ホームページへ)。
―――2011年7月3日 追記―――
アナログ放送終了カウントダウン表示を開始